『お前〇〇〇だな』寡黙なレンタカー運ちゃんの一言に、感動した話

河南省に市場調査に行った時の話である。2週間の大規模調査であった為、現地でレンタカーを借りる事にしたのである。中国でいうレンタカーというのは、運転手付きで1日1000元(15000円)程度である。その間、その運転手も出張という形で、1日中着いて回るのである。その時の運転手の最初の第一印象は寡黙で仕事は真面目、いかにも日本人を嫌っていそうな感じであった。過去に苦い思い出でもあったのだろうか!? 私はあまり声を掛けずに、様子を見る事にしたのである。

一週間も過ぎた頃であろうか⁉ 相変わらず寡黙で、タバコを吸うのは彼と私だけで、喫煙所で合ってもあまり会話が弾まない。『ま、こういう人もいるからね』と諦め掛けていたのだが、ちょうどその日の晩、彼も会食に参加する事になったのである。彼は会話には出てこないが、会食の席での会話の一コマを紹介しよう。

社長：『日本人はスゴイ。真面目で働き者である。』
俺：　『ん？真面目じゃないよ！』
一同: 『なぜ⁉』
俺:　 『真面目じゃない！クソ真面目なんだよ‼』
一同: 『ハハハ～』と笑いながら頷く。
俺： 『加えて、日本の考え方は世界基準と比べて遠い。むしろ君たちの方が世界基準の考え方 に近いんだ‼あなた達の方がスゴイ‼』
一同:　『・・・』無言で頷く。

この一コマを見ても分かる様に、図星だった様で、文章では表しにくいが、その場の雰囲気が物語っているのは明白である。いわゆるお世辞というやつで『日本人は誉め殺しておけば問題ない』と思われているのである。私は散々そういう場面に遭っているので、もうその手には乗らないのである。

翌日の朝、出発前に一人でタバコを吸っていると、例の寡黙な運転手がトコトコとやって来て一言。『お前、中国通だな。』とニヤリと笑って見せたのである。今までにない笑顔…昨晩の会話が功を奏したのか定かではないが、今まで寡黙で日本人嫌いと思っていた運ちゃんから言われた一言であったので、強烈に印象的で嬉しかったのを覚えているのである。