マナーは悪いが喧嘩にならない不思議
日本に旅行に来た中国人を見て、マナーの悪さを痛感している人はたくさんいるだろう。日本のニュースでも、マナーの悪さだけをクローズアップして面白おかしく報道している節があるのも事実である。ここ中国国内においてもマナーの悪さは同レベルである。いや、もっと酷いだろう。
地下鉄、ホテル、車の運転時などなど、ありとあらゆる場面で熾烈な競争が行われている。地下鉄では、車内から出る人が競争で入り口が詰まる上に、車内に入ろうとする人が出る人を待たずに入ろうとするので、二重に詰まる。空いてる車両では、お婆さん同士が椅子のとりあい…『めっちゃ元気やんけ~‼ 』と突っ込みたくなる。ホテルのチェックアウトでは、堂々と順番を抜かす、空港のカウンターでも同じ… 交通マナーに関しては頭を先に突っ込んだ方が勝ち、後ろの車が譲るという暗黙のルール…。まるで無秩序である。
そんな光景を見ていると、我々は『なんてマナーの無い社会なんだ〜!』と嘆いてしまうことも多々ある。しかし、長らくそのマナーの悪さを見続けていると、不思議なことに気付くのである。マナーの悪い人に対して『誰も怒らないし喧嘩にもならない』のである。
マナーが悪いが、なぜ喧嘩にならないのだろうか?自己主張の強いお国柄にも関わらず…。 我は順番抜かしなどされると、すごくストレスに感じて、中国語が流暢なら直ぐにでも文句の一つも言いたくなるのだが… 何かマナーに対する感覚の違いでもあるのだろうか!? もう少し掘り下げて考える必要がありそうである。
中国人の割り切った人間関係構造
マナーの悪さという表現を、競争社会という視点で考えてみたら、また違った見方ができるかもしれない。他人のことはお構いなしで、『私が一番だ〜‼︎ 』を最優先に考えて行動している様に見えるが、全ての事柄に関して競争だとすると、自然で当たり前のことだと感じるのでは無いだろうか⁉︎
一方で、老人や子供、妊婦など、社会弱者に対しては、率先してバスや地下鉄などで席を譲り、敬うことを当たり前にやってのけるのである。また、ビジネスの世界では、相手をおいしい料理と高価なお酒でおもてなし、手土産まで準備する徹底ぶり。別格は親族と親友には底抜けに無償の優しい対応が出来ることも忘れてはならない。
私がいつも感じることだが、マナーの悪い行動と親切の塊の様な相反する行動が、同一人物とは思えないのであるが、ここに大きなヒントが隠されているのである。
中国では、一種の割り切りで人間関係が構成されていると推測している。
①親族と他人
②友達と他人
③利害関係者とそれ以外
④社会弱者と一般人
他人には競争社会のルールに則って『負ける方が悪い』的に容赦無く冷たく対応するが、親族/友達/利害関係者/社会弱者には、最高のおもてなしで対応するといった割り切り型の人間関係である。この様な思考に至った根底には、人も物も信用しないという性悪説があるのだろう。
また、他人に冷たく対応したところで、相手からするとこちらも他人なので『ごく当たり前』のことであり、相手も何も思わないので喧嘩にもならないのである。ここでのポイントは、早いもの勝ちという暗黙のルールで、全員がそれを理解しているということである。全員が共通認識している早い者勝ちルール… 極めて単純明快である。
日本人が中国人のマナーの悪さに辟易する理由
それではなぜ日本人は、中国人の行動をマナーが悪いと感じ、辟易してしまうのだろうか!? 答えは簡単である。マナーが悪いと感じる理由は、全ての日本人が同じ早い者勝ちルールを理解して行動している訳ではないということが原因であろう。また、本来日本人は『他人に礼儀正しく親切にするのが美徳』という教育を受けている。日本の性善説の助け合い文化と彼らの性悪説の割り切り型の文化が違うのである。よって我々は『なんてマナーが悪いのだ!』とストレスを感じてしまうのであるが、彼らは悪気なく自国の当たり前のルールに則っているだけなのである。
少し中国のマナーの悪さを擁護する様に聞こえたかも知れないが、とても賛同はできない。社会全体が競争する事によって、余計に労力と時間が掛かってしまう場面が多々あることと正直者がバカを見ることが最悪である。世間でいう正義が損をするのが一番腹立だしいのであるが、今の中国ではこの正直者がバカを見る場面に遭遇する事が多く実に腹立だしい。
私もかつては正義感に溢れ、マナー良くしていたが、郷に入れば郷に従えで、最近は『やらなきゃやられる‼ 』ので、競争社会に参加しているのが現実である。例えば、いくら列に並んでいても、次から次へと横入りされるので、何時間待っても埒が明かないのである。もう自分も前に出るしか無い『私が先だ〜‼︎』と…。
この競争社会を是正するには、常識的なマナーのある人が過半数を超えないと難しいであろう。日本にマナーの良い中国人がたくさん来るのはまだまだ先の様であるwww。ローマは1日にしてならずである。
コメント